2018年式の日本仕様Honda Fit RSを買ったのは、2023年5月。走行距離は、まだ11,000kmだった。

6速MT、4枚ドア、Hondaお得意のシートアレンジ、3人の子どもを乗せても困らない室内、そして日本の道で扱いやすいサイズ。実用車としては申し分ない。しかも購入時から、無限のホイール、サスペンション、フロアマット、シートまで付いていた。前オーナーが、親切にもカスタム沼の入口を用意してくれていたわけだ。

それから3年。これまでに使った金額は、きっちり 21,261.84ドル

今でも家族も荷物も買い物袋も、長距離移動中に子どもがなぜか生み出す大量のゴミも積める。一方で、フルチタンマフラー、リアのビッグブレーキ、GTウイング、そして「実用車」という言葉が事務処理上のミスに見えるほどの特注ウェットカーボンも付いた。

サンセットオレンジIIのHonda Fit GK5。ウェットカーボン製ボンネットとフェンダーを装着し、ナンバーはぼかされている。
ひとまず完成した外装。「クルマは完成しない」という事実には目をつぶる。

最初から無事で済むはずがなかった

10代の頃からクルマが好きで、アマチュアレースにも出ていた。何より、手に入れたクルマをノーマルのままにしておけない。もしミニバンを買っても、いつか深夜2時に掲示板でバネレートを比較していると思う。

プエルトリコではGD3 Fitにターボを付けた。今のガレージにはS2000 Type S、Integra Type R、Civic Type Rもいる。それでも子どもがいる以上、地味な仕事をきちんとこなしながら、運転まで地味にならないクルマが必要だった。Fitは広く、安全で、軽く、サーキットでも本当に面白い。この組み合わせは、探すと意外なほど少ない。

Hondaの諸元表によれば、このGK5 RSは1.5リッターのL15Bを搭載する。純正色はサンセットオレンジII、カラーコードはYR-585。この2つくらいが、今もほぼそのまま残っているアイデンティティだ。

カーボン外装に交換する前のオレンジ色のHonda Fit GK5。純正ボンネットとグリルを装着し、ナンバーはぼかされている。
2024年9月。見て見ぬふりをすれば、まだ普通のFitに見えた頃。

まずは、運転中に触れる場所から

本格的な最初の変更は、Hybrid Racingのショートシフターだった。自分で取り付け、調整幅の中で最短に設定した。節度という人は、この日の打ち合わせに来なかったらしい。純正の6速シフトも悪くないが、交換後はストロークが短く、カチッとして、動きに機械らしさが増した。法定速度でも、発進するたびに楽しめるパーツだ。

次は無限のステアリング。Works BellのショートボスとSRDのスイッチ移設キットを組み合わせた。純正スイッチを収めるため、クイックリリースは使っていない。オーディオもクルーズコントロールも、必要なボタンはすべて動く。エアバッグ警告灯は抵抗で消した。

もちろん、社外ステアリングを安全性向上パーツと言い張るつもりはない。ポジションと操作感を優先して、自分で選んだトレードオフだ。ただし、警告灯だらけのクリスマスツリー仕様にはしなかった。

取付作業中、Honda Fitのフロントシートに置かれた赤いHybrid Racing製ショートシフター。
設定は最短。次のギアまでに、Hondaが不要な数ミリを残していたから。
無限ステアリングの左右に純正オーディオとクルーズコントロールのスイッチを移設したHonda Fitの運転席。
社外ステアリングでも純正ボタンは全部使える。見た目のために機能を捨てる必要はなかった。

この頃、無限のオイルフィラーキャップも付いた。計測できる性能向上はない。ただし、ボンネットを開けて誰かが見ている間だけ、体感で7馬力ほど増える。

無限のシートは、もう少し真面目に評価したい。サーキットでは身体をしっかり支え、家族で長距離を走っても苦痛にならない。J’s Racingのリアバーでシャシーの反応も締まった。車高調ではない無限サスペンションは、車高を下げながら、荒れた道のたびに家族会議を開かずに済む程度の快適性を残している。

無限RECAROシート、無限ステアリング、純正スイッチ、6速シフトを備えたHonda Fitの室内。
娘が定期的に「もっと踏んで」と頼んでくる家庭の、正しいファミリーカー内装。

チタン、下準備、そして高価なプラセボ

J’s Racing FX-PRO Titanium 50Rで、クルマの声が変わった。センター部にレゾネーターを持つフルチタンシステムだ。J’s Racingは、チタン構造により純正比で50%以上の軽量化をうたい、50mmのストレート構造で消音より排気効率を重視している。

実際の音量は、そこまで非常識ではない。レゾネーターのおかげで高速道路でもこもり音はない。ただ、Hasportのリアロアエンジンマウントを入れてから、明らかに音と振動は増えた。硬いマウントは、機械の動きを家族全員の話題に変えるのが得意だ。

Honda Fitのそばで、Harryが頭上に長いJ's Racingのマフラー箱を掲げている。
大人が長い箱を受け取り、財政的な責任感をその場で失う伝統儀式。

赤いMSD 82494イグニッションコイルも装着した。MSDの適合表には2015〜2019年Fitと2016〜2020年Civicの両方が載っている。同じL15系ならCivic Si用も使えるはず、という読みは当たった。装着は問題なし。性能差は、まったく分からない。ただしエンジンルームは格好よくなった。実験結果がそれだけの日もある。

Takedaのエアインテークと、J’s Racingの最新型T-REVも加わった。T-REVはクランクケース内の圧力を一方向に制御し、ポンピングロスを減らすという製品だ。

僕には何も感じられなかった。

計測器なら何か見つけるかもしれない。僕の尻センサーは、これを 信仰で動く高価なパーツ に分類した。

Honda Fitの床下に装着された、焼き色の美しいJ's Racing FX-PRO Titanium 50Rリアマフラー。
50R。軽く、美しく、スーパーへの買い物までそれらしい音にする。
Honda Fitへの装着前に並べた、Spoonスタイルのカーボン製交換式ドアミラー。
電動調整と格納機能は消えた。その代わり軽くなり、停車中でも速そうに見える権利を得た。
赤いMSDコイル、J's Racing T-REV、無限オイルキャップ、Takedaエアインテークを装着したHonda FitのL15Bエンジンルーム。
MSDコイル、T-REV、無限オイルキャップ、Takedaインテーク。準備と配管と、少しのエンジンルーム演出。

馬力より先に、止まれるクルマへ

GK5用で望んでいたリアビッグブレーキを作っていたのは、調べた限りYellow Speed Racingだけだった。必要だったから買った。それに、Fit用のニッチな部品は「そろそろ注文しよう」と思った瞬間に廃番になる習性がある。

このキットはアダプターを使い、純正サイドブレーキを残せる。制動力は劇的に良くなった。ただし、よく鳴く。サーキット寄りの部品は、設計会議に快適性が呼ばれていなかったことを歩行者にも知らせたがる。

カーボンGTウイングとの組み合わせで、高速域の安定感は大きく向上した。Niigataのサーキットでは、ラップタイムを丸1秒縮めた。カタログの宣伝文句より、この1秒のほうが大事だ。同じドライバー、同じクルマ、そして僕の気持ちに配慮してくれないストップウォッチで出た数字だから。

Honda Fitの無限ホイール越しに見える、Yellow Speed Racingの青いリアキャリパーと大型ローター。
よく止まり、サイドブレーキも使える。パッドが時々、音で存在を主張する。
Honda Fitの点灯したメーターを囲む、J's Racing製カーボンメーターパネル。
カーボンのメーターパネルでタイムは縮まらない。縮まなかった言い訳を考える景色は良くなる。

GTウイングが、引き返せない地点だった

ウイングを付ける前なら、まだ「少し派手なストリート仕様」で通せた。付けた後は、ガソリンスタンドの店員に追加説明する必要がなくなった。

自分で行った作業の中では、取り付けが最も大変だった。J’s RacingスタイルのカーボンGTウイングで、プエルトリコの意匠はステッカー。純正オプションではない。Hondaには検討してほしいが。このFitを作った日本と、自分が育った場所をつなぐものだから、感情的には一番大切なパーツだ。

見た目だけではない。速度が上がるほどリアの動きが落ち着き、車体全体が安定する。外観の変化があまりにも大きく、その後に付けたパーツはすべて、ウイングが先に宣言した新しい姿へ追いついていくようだった。

AliExpressで買ったカーボングリルは、驚くほど完璧にフィットした。自分でも書くとは思わなかった一文だ。Spoonスタイルの交換式カーボンミラーは電動調整も格納もなくなったが、その分軽い。毎日は不便になり、このクルマには完璧に似合った。

そして、ボディーの大部分を交換した

最後の大変身はまとめて行った。特注ウェットカーボンのボンネット、フロントフェンダー、ルーフパネル、トランク。カーボンの無限スタイル・サイドスカート。無限フロントバンパー。そして純正色サンセットオレンジIIでの全塗装。

上から貼るカバーではない。ボンネット、フェンダー、ルーフ、トランクは、いずれもパネルごとの交換だ。ルーフは純正パネルを外す必要があった。ショートシフターから始まった話が、ついにボディーの大手術へ進んだ。

板金と塗装はリアルG.K.にお願いした。作業期間は約1か月。仕上がりは完璧だった。YouTubeチャンネルでも、修理やカスタムの仕事を見ることができる。何より、カーボンパネルのチリが合い、色もそろい、カスタム作業にありがちな「細かいところは後で」という宿題を一つも持ち帰らずに済んだ。

ウェットカーボントランクと大型カーボンGTウイングを装着したオレンジ色のHonda Fitの後ろ姿。ナンバーはぼかされている。
カーボントランクとGTウイングで、スーパーへ行くクルマが、スーパーで撮影されるクルマになった。

それでも、家族車でなければならない

妻は、このFitが大嫌いだ。

3人の子どもは全員、大好き。娘はいつも「もっと踏んで」と言う。少なくとも家族に一人は、開発コンセプトを正しく理解している。

このFitで静岡、会津若松、仙台、東京へ行った。チタンマフラーに高速道路のこもり音はなく、無限シートも長距離で快適。GTウイングがどれだけ大きくても、リアゲートから入る荷物の量を精神的に減らすことはできない。この実用性を失わないことが、最初からの条件だった。

車検には、独自の笑いもある。ある検査日に「サイレンサーは認められない」と言われ、マフラーを交換するため一度帰された。戻ったら、サイレンサー付きのまま合格した。検査員の横目には、文章化されていない通達が数ページ分詰まっていた。

ガソリンスタンドでも、よく見られる。格好いいと思っているのかもしれない。あるいは、何種類のカーボン柄をFitに付けたら税区分が変わるのか、計算しているだけかもしれない。

21,261.84ドルで、何が変わったのか

一番価値があったのはカーボンパーツ。軽量化でき、クルマの存在感も一変した。反対にT-REVは、何も体感できないので最下位。最初から付いていた無限ホイールも、今ならもっと大径かワイドなものを選びたい。

次の段階は、すでに決めている。

  • RAYS Volk Racing CE28N-plus SLホイール
  • Yellow Speed Racing フロント6ポットUltraビッグブレーキキット
  • CUSCO SPORT S車高調、品番3A2 64S CB
  • EXEDY Single Sports S Metalクラッチ、HK07T
  • CUSCO Type RS 1.5wayフロントLSD、386 C15
  • J’s Racing MAX Coolingラジエーター、RAS-F5

グリップ、制動力、セッティング幅、冷却、駆動力の伝わり方をまとめて改善する計画だ。そして、パーツは全部ある。ソフトだけがないで書いた、ECU対応待ちのエンジン製作への下準備でもある。

鍛造ピストンとコンロッド、カム、バルブスプリング、Civic Si用インジェクター、カーボンインマニ、70mmスロットル、180whpという目標は、今も残っている。ECU対応が最後まで来ず、通常のJ’s Racingリフラッシュで終える可能性も残っている。

エンジン製作が実現しないことは、受け入れられる。

ノーマルの家族車を所有することは、どうやら受け入れられない。

4台のHondaの中で、一番まじめな選択として始まったFitは、今も送迎、買い物、長距離旅行に一番使うクルマだ。ただし、フルチタンの音を出し、鳴くビッグブレーキで止まり、プエルトリコのウイングを背負い、車体上部の大半がカーボンになった。

それでも実用的だ。

少なくとも、僕の基準では。